むっつ、むこうに・・・
孫の頭を刈った。
5歳の孫は、坊主頭がよく似合う。
ジサマも、高校2年まで丸刈りだった。
似合うも似合わないもない、みんなそうだった。
* * *
ほんと言うと・・・
ジサマには、ハゲがあった。
頭のてっぺんに1円玉くらいの大きさだった。
どうして出来たのかなんて知らない。
ケガをしたか、でき物でも出来たのだろう。
気にしたことはなかった。
* * *
しかし、ケンカをすると悪口を言われることがよくあった。
「・・・よっつ、よこちょにハゲがある。」
「いつつ、いつものハゲがある。」
「むっつ、むこうにハゲがある。」
ハゲをあざける数え歌だ。
少し離れたところで、ジサマの名前をでっかく言って逃げていった。
聞こえないふりをしたが、ほんとは追いかけてぶん殴りたかった。
***
今は…
あのハゲはどこにあったのか、分からなくなった。
喜べない…。