(続)ごんぼねっこ日記

ジサマは、中学校の元教師。定年退職した日まで精いっぱい勤めたあげたつもりだったが、結局、育ててもらったのはジサマのほうだった。子どもたちはすごい。そしてバサマはもっとすごい。みんなに感謝の気持ちいっぱいで生きている。

   

スパイラル現象

もう60年も前のことだけど…

紙芝居のおんちゃんのことが忘れられない。

* * *

ドンドンのおんちゃんと、カチカチのおんちゃん。

ジサマのところへは、二人来た。

ドンドンのおんちゃんは、太鼓を鳴らしながら来る。

それはうまい話だった。

カチカチのおんちゃんは、拍子木だ。

拍子木もしょぼい感じだったけど、話はもっとしょぼかった。

* * *

1回、10円。

たった10円だけど、週に2回見ることは出来なかった。

当然、ドンドンのおんちゃんにみんな集まる。

カチカチのおんちゃんのときは、せいぜい5~6人。

いつも遊んでる場所でやるわけだから、少し離れて見ている。

すると、「ペロンコすんな!」とおんちゃんが怒る。

見たいわけではない、見えるんだ~!

生意気なことを言って逆らうから、カチカチのおんちゃんはいつも不機嫌。

紙芝居も、ますますつまらなくなる。

***

ドンドンのおんちゃんはいつも上機嫌。

カチカチのおんちゃんはいつもしかめっ面。

いい方に回転すると、どんどんそっちへエスカレートするし、

悪い方に回転すると、どんどん悪くなるものだ。

* * *

今考えると、カチカチのおんちゃんは可哀想だったかも…。

あまり稼ぎもよくなかったろうし、きっと家に帰っても不機嫌だったはず。

でも、悪い回転を止めるのは、やっぱり笑顔しかない。

バサマは、それが出来るからすごい。