まさかの連続(1)
女の子が家を出たことがあった。
中1だ。
母親と一緒だった。
残ったのは父親一人。
ただでさえ無口だったのに、いっそう寡黙になった。
* * *
大金を持って出たらしい。
まさかの600万円。
母親の実家から相続した遺産金だという。
実は…
母親は字が読めない。
父親も、数字が分かる程度。
中1の女の子も、知的な障害が見られた。
* * *
家を出てすぐに、中古の家を契約したことが分かった。
隣町。
400万円。
即決だ。
しかし、障子や襖の張り替えをする段階で、まさかのキャンセル。
不動産屋とは、ほとんど娘が話しをしたらしい。
140センチにも満たないくらいの身長。
当然、不審に思うはず。
その段階で知らせてもらえればよかったのだが…。
* * *
お父さんは、町内をくまなく自転車で探し回った。
ジサマたちも、近隣の町まで範囲を広げて探して歩いた。
しかし、
どこに行ったのか、まったく手がかりはない。
* * *
一週間も過ぎた頃、
しょんぼりするお父さんとコタツで向かい合ったジサマ。
コタツの上に置かれた1枚のハガキに目が止まった。
これが、まさかまさかの展開に繋がった。