まさかの連続(2)
暗くなってから、バサマと二人、町内あちこちを車で回った。
帰り際に、その子の家に寄った。
昔の町営住宅のような小さな家。
お父さんは、お風呂に薪をくべていた。
いつものように黙ってうなだれているだけ。
中の様子を見せてもらった。
古くて小さな部屋に似合わず、真新しい電気製品がいっぱい。
とんでもなく大きなテレビもあった。
全部、娘が注文したという。
* * *
娘の部屋には、シーツで作ったような大きな袋。
中には、ぬいぐるみや古いおもちゃがいっぱい。
捨てるつもりだったのか…。
それ以外に、部屋を出て行くような気配は残っていない。
まったく突然の出来事だったとしか思えない。
* * *
コタツのそばの電話がぴかぴか光っている。
お父さんに聞くと、それが何だか分からないと言う。
留守電ランプのようだった。
許可を得て再生。
5,6件、全部、無言だった。
* * *
番号を確かめると、親戚からのものがほとんど。
しかし、2件ほど、県外からも…。
お父さんは、留守電の機能を知らない。
それどころか、電話そのものもあまり出たことがないようだった。
* * *
あれこれ話しているうちに、コタツの上のハガキが目に止まった。
ダイレクトメールのような…。
宛名が娘あて…。
「これ、何ですか?」
聞いたが、分からないと言う。
見せてもらった。
仙台のマンションの内覧会の案内だった。
…まさか
ハガキを借りていった。
* * *
不動産業者に電話。
案の定だった。
マンションを見たいと連絡を入れたらしい。
内覧会に来る時間を約束したという。
事情を話し、ジサマたちが行くまで引き留めてほしいとお願いした。
* * *
バサマと二人、仙台まで直行。
もちろん、警察にも連絡を入れた。
* * *
約束の時間よりずっと早く着いた。
担当の人に挨拶をし、目立たない近くの路上に車を止めて、待つことにした。
・・・
2時間ほども待ったか…。
結局、あらわれなかった。
担当の人にお礼を言い、家に戻った
ジサマの携帯に連絡が入ったのはすぐあとだった。
担当の人からの電話。
押し殺したような声で
「今、来ています。」
さぁ、それからだった。