まさかの連続(4)
「どうやってホテルを探したの?」
聞いたら、インターネットだと言う。
* * *
今は、小学校でもインターネットの使い方を教える。
ジサマはこのことに反対だ。
インターネットの操作は覚えても判断力が伴っていない。
小さな子どもにピストルを与えるようなものだ。
物ごとには順番がある。
いっぱい友達と遊んで、いっぱい本を読んで、
インターネットはそれからでいい。
* * *
この子は、知的に遅れていた。
しかし、ネットの操作は知っている。
ホテルはネットで予約していた。
* * *
「どうして福島のホテルに行ったの?」
返事は単純だった。
「プールがあるから」と言う。
あっちこっち、プールのあるホテルを泊まり歩いたようだ。
「水着もってきたの?」
と聞いたら
「うん」とニコニコした。
まったく屈託がない。
* * *
身長140センチもない小さな身体。
話す言葉はほんとに幼児語。
なのに、600万円もの現金を袋に入れて、
立派なホテルを泊まり歩いた。
* * *
ハガキを見つけたのがコタツの上と書いたので、寒い時期と勘違いしたかも知れない。
しかし、夏休み中の出来事だった。
その子の家は、年中コタツを置きっぱなし。
そういう家だ。
* * *
「プールで遊びたかったの?」と聞くと
「うん」と言う。
「それだけ? 学校のプールは?」と聞いたら、
どうも仲の良かった友達と気まずいことがあったらしい。
「だから、家を出たの?」と聞くと
「お母さんが行こうって言ったから」と言う。
* * *
母親はお隣のお母さんに肩を抱かれて穏やかになっていた。
しかし、母親の言っていることも意味不明。
結局、家を出た理由はよく分からなかった。
家に帰りましょうね、と言うと素直に頷いた。
* * *
二人が家を出たことで、ジサマが連絡や相談をしていたのは警察だけではない。
福祉事務所もそのひとつだった。
見つかったのはいいが、これからが心配だ。
二人をジサマの車に乗せ、そのまま福祉事務所に直行した。