逃げた父親(1)
「コウチョウセンセ~!」
仙台のど真ん中、一番町通りで黄色い声が聞こえた。
振り返ると、きゃぴきゃぴの女子高生が3人。
真ん中の子どもが走って来る。
「お~」とジサマも手を挙げたが、かなり恥ずかしかった。
* * *
その子は、児童相談所から施設に入った子だった。
施設に入るのは、究極の選択。
学校としては出来れば避けたい選択だったが…。
結局
学校に戻ることが出来ず、施設で卒業証書を渡した。
卒業式に、親は姿を見せなかった。
* * *
母親は、最初からどうも様子が変だった。
会話が成り立たない。
精神的な異常を感じた。
父親は、2年前から関東方面に単身赴任していた。
民生委員の方は、父親の単身赴任が母親の異常を大きくしたのではないかと言っていた。
* * *
母一人、娘一人の生活。
母親は食事をつくれない。
娘がつくるしかなかった。
最初は頑張っていた娘も、いらいらが募ってきたらしい。
わけの分からない母親の面倒を見ることに嫌気がさしてきた。
「何でお父さん、帰ってこないの…」
その気になれば、土曜日には帰って来れそうなのに帰ってこない父親に腹が立ち始めていた。
* * *
父親は、逃げていた。
りっぱな身なり。
話す言葉もちゃんとしている。
だけど、どうも言い訳が多い。
ジサマにもすぐ分かる言い訳ばかりだった。
* * *
その結果、娘は家を出た。
娘が家を出たことも母親はよく分からない。
見つけることが出来たのは、一週間近く過ぎてから。
ママポリスさんと一緒の「張り込み」が見事に功を奏した。