逃げた父親(2)
その子が家を出たのは、中3の11月頃だった。
学校は文化祭で慌ただしいとき。
* * *
欠席しているのに、家からの連絡はない。
担任が家に出向いてみたら、昨日から帰っていないと母親が言った。
その顔はほんとに無表情だと言う。
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学校では、素行に問題がある連中と仲がよかった。
しかし、誰に聞いても何も知らない。
突然の出来事だった。
単身赴任中の父親に連絡をしたが、「そうですか」という答え。
…腹が立った。
* * *
結局、その晩も帰ってこなかった。
親に確認をし、警察に捜索願を出した。
女の子だ。
少しでも早いほうがいい。
* * *
捜索願いを出しても、警察がすぐに動いてくれるわけではない。
警察もそんなに暇ではない。
それに比べると、校長は時間が自由だ。
時間を見ては、思いつくところを歩き回った。
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…と、隣町のゲームセンター。
落書き帳を見ていたら、気になるところがあった。
そのゲーセンには、10冊以上の落書き帳があった。
学校の悪口や友達の悪口がいっぱい書いてある。
たいてい殴り書きで、判読できないものが多い。
しかし、ジサマも字が下手だから、そういうのを読むのは得意だ。
* * *
落書き帳に、その子がグループ内で呼ばれている名前を見つけた。
内容もそれらしい。
誰かとやりとりをしていた。
その誰かと一緒らしいときもあれば、そうでないようなものもあった。
事情を話し、落書き帳を全部借りてきた。
出ている名前をチェックし、警察に確かめた。
* * *
その中の一人。
隣町の無職少年がいた。
学校に聞くと、中学校のときに問題を起こし、保護観察処分を受けている少年だった。
当たって砕けろ…
そういう思いで、その家に行ってみた。
果たして、その男の子も、家を出ていた。