逃げた父親(3)
ジサマが訪ねた男の家。
隣町の小さな家。
所轄のママポリスさんと一緒に出向いた。
* * *
16歳。中学校を卒業してまだ1年も過ぎていない。
中学校の頃から問題行動を繰り返し、保護観察処分を受けていた。
借家のような小さな家。
声をかけると、母親が出てきた。
ママポリスさんの顔を見て不安そうな顔をした。
5,6歳くらいの小さな子供がいた。
「○○くん、いる?」
ママポリスさんが手短に聞いた。
* * *
やっぱり、いなかった。
3日も帰っていないという。
保護観察処分を受けている者が所在不明になることは許されない。
母親も、それを心配していた。
「もうすぐ保護司さんと会う日なので、それまでは帰ってくると思うのですが…。」
聞いて思わず、ママポリスさんと顔を見合わせた。
* * *
保護観察処分の場合、月に一度保護司との面接を義務づけられている。
万一、その面接に来なかったときは、即、施設送りになることもある。
どんなことがあっても、必ず顔を見せる。
この機会を逃してはならない。
* * *
「風邪を引いたので…」などと嘘の連絡をしてくるかも知れない。
保護司さんにも事情を話した。
面接日は2日後だった。
ママポリスさんが保護司さんの家の近くで待機した。
ジサマは、生徒指導担当と二人、少し離れた場所で車を止めた。
面接が始まったはずだが、なかなか連絡は来ない。
やっと携帯に連絡が入ったのはずいぶん過ぎてからだった。
* * *
「隠すと処分が重くなる」と聞いて、男の子は怖くなった。
電車で待ち合わせをしていると言った。
駅は少し離れている。
すぐに車を走らせ、ママポリスさんと一緒に車で列車を待った。
もう一人、生活安全課の警察官も目立たない車で駆けつけてくれた。
* * *
列車が着いた。
生徒指導担当と私服の警察官が列車に乗り込んだ。
2両だけの列車だ。すぐに見つかった。
* * *
「健康ランド」なるところで過ごしたという。
警察で簡単な話をしたあと、児童相談所へ向かうことになった。
それ以外、保護できる場所はなかった。
仙台へ向かう車の中、それは大暴れしたそうだ。
・ ・ ・
これでいいのか…
生徒指導担当は、車の中でずっと考え続けたと言う。