母の悲しみ(2)
男の子が家に戻った次の日、お母さんから電話があった。
子どものいないところで話がしたいとのこと。
ジサマの家で聞くことにした。
* * *
話をすることがほとんどないという。
何を聞いても口をきいてくれない…
何に反抗しているのかも分からない…
2年生の頃から急に激しくなったらしい。
* * *
何を考えているのか分からない…
父親がいればこんなことはなかったのかも…
涙を流した。
父親とは離婚した。
今はどこにいるかも知らない。
探して、父親の力を借りるべきかと悩んでいた。
* * *
世の中には難しい問題がたくさんある。
中でも、絡んだ感情をほぐすのは、親子といえども簡単なことではない。
しかし、あの子は大丈夫だ…。
なんとなくそう思う。
お母さんがこんなに心配している…
あの子はお母さんを裏切ったりしない、そう思う、と話した。
* * *
卒業式。
証書を受け取って、あの子は手を差し出してきた。
握手の手。
前の年から、何だかそういうはやり(?)が出来てしまった。
握手を返すジサマの方が恥ずかしい。
しかし、この子には力いっぱい握り返した。
頑張れよ、心からそう思った。